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Whole Earth Catalog(ホール・アース・カタログ)は、1968年にスチュワート・ブランド(Stewart Brand)によって創刊されたアメリカのカウンターカルチャーのアイコン的な出版物です。内容としては、自己持続的な生活、DIY文化、エコロジー、そしてテクノロジーと自然との関係についての情報を提供するもので、1960年代から1970年代のヒッピー・ムーブメントに大きな影響を与えました。
カタログは、「ツールとアイディアのカタログ」というコンセプトで、さまざまな製品や本の紹介、アイディアの交換を通じて、読者が自分たちの環境をよりよくするための情報を提供しました。キャッチフレーズの一つに、「道具を使うことで変わることができる」があり、自己実現と自主的な生き方を強調していました。
1. Whole Earth Catalogの背景
スチュワート・ブランドは、テクノロジーと自然が融合することで、人々の生活がより豊かで持続可能なものになると考えていました。特に、当時のヒッピー文化やバック・トゥ・ザ・ランド運動(都市生活から離れ、自然に帰る運動)との親和性が高く、自己充足的な生活を求める人々にとって、Whole Earth Catalogは貴重なリソースとなりました。
2. Whole Earth Catalogの内容
Whole Earth Catalogの中には、さまざまなテーマやアイテムが取り上げられていました。主に以下のような内容が含まれていました。
- 農業とガーデニング: オーガニック農法や自給自足に関する書籍や道具の紹介。例えば、コンポストの作り方、土壌改良の方法、野菜の育て方など。
- 建築とDIY: 自分で家を建てるための方法や、サステナブルな建材の紹介。また、家のメンテナンス、工具の使い方、家具の作り方なども取り上げられていました。
- エコロジー: 自然保護活動やエコロジカルな考え方に関する情報。環境に配慮した生活や、自然資源の持続可能な利用についての議論が含まれていました。
- コミュニティ形成: コミュニティや共同体での生活、共同作業のあり方、共同体運営のためのツールなど。
- 教育と学び: 自主学習やオルタナティブ教育の紹介。自分で学ぶための書籍やリソース、教育の新しいアプローチについての記事。
- コミュニケーション: メディアの使い方、コミュニケーションのツール、テクノロジーと社会との関係について。
- サバイバル: 自然環境での生存方法や、アウトドアでの生活のための道具・知識の紹介。
- 科学とテクノロジー: パーソナルコンピュータ、科学的ツールやテクノロジーの活用方法についての紹介。ブランドはテクノロジーが個人の自由や創造性を拡大するものだと考えていました。
3. Whole Earth Catalogの目次(例)
目次の内容は各号によって異なりますが、1971年版の例を挙げると、以下のような章立てがありました。
- Understanding Whole Systems – システム理論やエコシステムについて
- Shelter and Land Use – 住居の建設、土地利用の方法
- Industry and Craft – 工業製品やクラフトの知識
- Communications – メディア、写真、印刷技術など
- Community – 共同体の形成、教育、健康
- Nomadics – 移動生活やアウトドアでの暮らし方
それぞれの章には、関連する書籍、道具、サービスのレビューが含まれていました。レビューの多くはカタログの編集者やユーザーによって書かれ、「自分たちが本当に使えるものだけを選ぶ」という厳選された情報が載せられていました。
Whole Earth Catalogは1972年に一旦出版を終了しますが、その後も何度か復活し、新しいエディションが発行され続けました。また、その思想や内容は、インターネット文化やサステナビリティ運動などに多大な影響を与え続けています。