Glossary
齋藤幸平と岸本聡子は、それぞれ異なる観点から「コモン」や「コモンズ」の概念を議論していますが、共通して「共有財産(コモンズ)」の再考やその実践に重きを置いています。それぞれの主張の概要と、両者のアプローチの違いについて解説します。
齋藤幸平の「コモン」
齋藤幸平は、マルクス主義の立場から「脱成長」をキーワードに、自然資源や人々が共有できる財産としての「コモン」の再評価を主張しています。齋藤にとって「コモン」とは、個人や企業によって私有化されず、持続的にコミュニティ全体で管理・利用されるべきものです。彼は、現代資本主義が自然資源や人間関係までも経済的価値に変え、それが環境破壊や社会の不平等を生む根源だと捉えています。したがって、齋藤は「コモン」を基盤とする新たな経済体系を提案し、これを「コモン化」と呼びます。この考え方は、人々が所有ではなく「共同管理」し、誰でもアクセス可能で持続可能な社会を目指すものです。
岸本聡子の「コモンズ」
岸本聡子は、コモンズの実践的・政治的な側面に重きを置いており、特に水道やエネルギーといった「公共サービス」を共同で管理する「コモンズ」の運営に注目しています。岸本のアプローチは、都市や地域のレベルで人々が公共資産を管理・運営する方法に焦点を当てています。彼女は、こうした公共資産が利益優先の民間企業によって支配されるのではなく、市民が主体的に管理する「市民コモンズ」を目指しています。岸本はヨーロッパでの水道事業の再公有化(リモニシパリゼーション)に携わった経験から、コモンズは地域住民によって守られるべきだと考えており、市民が主体となる政治的な枠組みの重要性を強調しています。
両者の違い
1. 理論的背景とスコープ:
• 齋藤幸平: マルクス主義的な視点で、資本主義を批判し「脱成長」や「コモン化」を提唱しています。環境破壊や経済的格差を解決するための大きな社会変革が必要だとし、経済構造全体の変革を目指す壮大なスコープです。
• 岸本聡子: 実際の地域社会や公共サービスにフォーカスしており、主に自治体レベルでの市民参加型の「コモンズ」運営を主張しています。実践的・地方政治的な視点が強く、具体的な公共サービスの再公有化や市民管理が目標です。
2. アプローチ方法:
• 齋藤幸平: 理論的な側面が強く、コモンの概念をもとに資本主義に代わる新しい経済システムを構築することを重視しています。
• 岸本聡子: 実践的な行動を重視しており、市民が現実に公共財を管理するための具体的な運営方法を示しています。
3. コモン/コモンズの領域:
• 齋藤: 自然資源や人間関係など幅広い「コモン」を指し、私有化を排除した社会全体の変革を意図。
• 岸本: 水道やエネルギーといった公共サービスの「コモンズ」運営を強調し、市民の管理権限を確立しようとする点が特徴。
結論
齋藤は理論的に「資本主義からの脱却」を目指す中で「コモン」を再考し、岸本は実践的な「市民の共同管理」によって公共サービスを守ろうとしています。
ZINE
「コモンと「自治」論」(齋藤幸平+松本卓也)で、岸本が「<コモン>と<ケア>のミニシュパリズムへ」という論考を書いている。もちろんその文章の素晴らしさ、政治とフェミナイゼーションと<ケア>の思想などは、なかなか読めるものではないのので、是非読んで欲しいのだけど、ちょっとした編集のいたずらか、その論考の前に、松村圭一郎による「資本主義で「自治」は可能か?」という論考がある。
商品交換と贈与は二分できないという古典的な文化人類学の考えを紐解き、独立自営業という形態(本来、マルクスでは、プチ・ブルジョアジー(中間階級)として、ブルジョワジーか労働者に分類されるといわれていた)に希望を描き、資本主義のなかで「自治」(すなわちコモン・コモンズ)は成立すると述べています。
わたしは、資本主義とは人間の本能として成立したものでああり、神の見えざる手とか考え方はあるにせよ、それがマルクスの言ってるとおりなくなることは無いと思っています。その本能のイデオロギーのなかで、以下にアナーキーズムに生き(アナルコ・キャピタリズムのような夢)コモン・コモンズに集いともに生きていく。それが理想な生き方なのかなと思うのです。商店街万歳・個人事業主万歳みたいな。